学生諸氏へ
教養部は本学の教養教育を行なっているところです。教養には、堅苦しいとか役に立たないといったネガティブなイメージがあるかもしれません。確かに、教養がなくても生きていくことはできます。しかし、複雑で変化しやすい社会をより豊かに生きるためには、教養が必要不可欠と言っていいでしょう。
これから皆さんが直面する「問題」には、多くの場合「正解」がありません。よりよい方法を導くためには、専門的知識だけでなく教養が必要になります。アップルの創業者のひとりであるスティーブ・ジョブズが若い頃にカリグラフィー(西欧の書道)を学んでいたことや、後年に坐禅を実践していたことはあまりにも有名ですが、そういった彼の教養がアップル製品の機能美に満ちたデザインにつながっていることは想像に難くありません。また、最適な決断を下すためには論理的な思考だけでなく、審美的な要素(音楽や絵画などの美しさを理解する力)も必要であるという研究もあります。何かうまくいかない時には、文学作品の一節や哲学者の考え方がヒントになることもあるでしょう。
何よりも、教養は皆さんが「どう生きるのか」「どういう人物になりたいのか」を考える土台になります。この「問題」にも「正解」はありませんが、長い時間をかけて教養を身につけながら考えていけば、きっと一生の宝になるでしょう。
新しいものをつくりだす時、大きな決断をする時、失敗から立ち直る時、みなさんが身につけた教養はきっと力を貸して、背中を押してくれるはずです。大いに学び、幅広い知識や技術を身につけてください。